身近な人とのもめ事②
相談内容私(B)が所有する土地とお隣さん(C)が所有する土地との間の境界線上には,塀などは設置されて
いませんでしたが,最近になってCさんが「境界線上にフェンスを設置したい。ついては,費用を
半分負担してもらいたい」と申し入れてきました。私は別にフェンスなんか設置しなくてもいいと
思っているのですが,フェンスの設置や費用の負担を受け入れなければならないのでしょうか。
解答プライバシーを守るため,境界線の明確化のため等,隣地との境界線上にフェンスや塀を設置したいと
考える場合は多くありますが,問題はどこに,誰の費用で設置するかです。
まず,自分の土地上に,自分の費用でフェンスや塀を設置することは自由です(高さや形状によっては
隣地の日照権侵害等で問題となることがありますので注意)。
Cさんの請求は囲障設置請求権と呼ばれ,民法では,建物の所有者は,隣地の建物所有者と共同の費用で,
境界に囲障(フェンスや塀)を設置することができるとされています(民法225条1項)。
この民法の規定によると,囲障の形状や高さについては隣地所有者との協議によることになりますが,
囲障の設置の請求自体に対抗することはできないことになります。
従って,相談の回答としては,フェンスを設置することや費用の負担を受け入れなければならないと
いうことになります。しかも,囲障設置請求権に基づいて境界線上に設置された囲障は隣地所有者との
共有と推定されますし(民法229条),その保存の費用も等分とされますので(民法226条),
将来的に,設置された囲障を巡って更なるトラブルが発生することも懸念されます。
このようなトラブルが発生しないよう,Cさんとよく協議をしていただく必要がありますし,
場合によっては,このようなトラブルを避けるために,自分の土地がフェンスによって多少狭くなることを
甘受し,その代わりCさんにフェンスの設置費用を出してもらうこと(その反対もあり得る)や,
納得できるものではないかもしれませんが,Bさんの所有する土地上にBさんの負担でフェンスを
設置することを検討してもよいかもしれません。
お隣さんとの関係は何年も続きますので,可能な限り,トラブルがないようにしたいものです。
※回答者弁護士 柳澤修嗣(2020.5)