寄与分と特別寄与料制度について②
相談内容私たち夫婦は子供もいなかったことから夫が寝たきりになった高齢の父親を引き取り、夫に代わり
私が主に夫の父の世話をしてきましたが、2年ほどして夫は交通事故で死亡してしまいました。
夫亡き後も夫の父の介護を1年間続けて最期を看取りましたが、遺産は夫の兄弟が相続し私は相続権も
なく苦労しただけで何も請求できないのでしょうか。
解答
令和元年7月1日施行の改正民法(相続法)において特別寄与料制度が創設され、相続人以外の
被相続人の親族が、無償で被相続人の療養看護等を行った場合は、一定の要件の下で、相続人に
対して金銭請求をすることができるようになりました。これまで被相続人の子の妻が長年介護を
しても相続人ではないことから寄与分は認められませんでした。このような不公平な状態について、
子の妻の介護による貢献を子の行為と同一とみなして寄与分を認める等の対処をしてきましたが、
夫が被相続人より先に死亡している相談の事例ではこのような対処はできず、また被相続人に子が
いることから相続人にはならない兄弟姉妹等による貢献についても寄与分を認めなければ不公平で
あるとの指摘もありました。
新しい特別寄与料制度では、寄与分が認められる相続人から拡大されたものの、請求権者の範囲は
「(相続人ではない)被相続人の親族」に限られるので内縁の妻は含まれません。特別寄与料は
遺産分割手続とは関係なく相続人に対し請求することになりますが、相続人との協議がまとまらない
場合の家庭裁判所に対する協議に代わる処分の請求は、相続の開始及び相続人を知った時から6カ月
または相続開始の時から1年を経過したときはできなくなるので注意が必要です。
※回答者
弁護士 佐藤 豊(2020.9)