交通事故の損害賠償
相談内容私は，片側１車線の道路沿いに建つ賃貸アパートの１階に暮らしています。
ある日，居眠り運転をしていたＹが運転する車が，私の住むアパートの壁に激突しました。不幸にも，
その壁の内側が私の住む部屋で，アパートの壁が壊れただけでなく，部屋に置いてあったオーディオ
セットもめちゃくちゃに壊れてしまいました。壁が壊れて住める状態ではありませんでしたので，修繕
工事が行われた１週間はホテルでの生活を余儀なくされました。
壊れてしまったオーディオセットは，私が３年前から使っていてとても気に入っていたもので，大変に
ショックを受けています。また，突然自宅を離れて住み慣れないホテルでの生活を余儀なくされ，外食
をしなければならない等不便な生活を強いられました。 オーディオセットの買い換え費用や慰謝料を
ＹやＹが加入する保険会社から支払ってもらうことはできますか。
解答
今回の事故でお怪我がなかったことは，不幸中の幸いでした。
オーディオセットが壊れたことについて，Ｙ（Ｙが加入する保険会社，以下同じ）から賠償金を支払
ってもらうことはできます。
ただし，オーディオセットの買い替え費用や購入当時の価格の賠償がなされるものではありません。
オーディオセットのような「物」が壊れた場合，法的には，Ｙは，その物が壊れた時点の時価額を賠償
すれば責任を果たしたとされます。壊れたオーディオセットは既に購入から３年が経過しているとなると，
賠償額は低廉なものになってしまうかもしれません。また，いくらお気に入りの物だったとしても，物が
壊れたことに対する慰謝料は認められないことが一般的です。
不便な生活を余儀なくされたことについて，高級ホテルに宿泊した場合は別ですが，原則として，ホテル
の宿泊費はＹに支払ってもらうことができます。
他方で，どこにいても食事はとりますので，通常，その期間中に要した外食費全部がＹの負担になるとは
いえません。また，個別的な事情にもよりますが，１週間程度のホテル住まいですので，慰謝料が認めら
れる可能性は低いと思います。
大切な物を壊され，また，不便な生活を強いられたという嫌な思いをしていることはよくわかりますが，
その思いが必然的に相手方から慰謝料を支払ってもらえるという結論に結びつくわけではないのが，残念
なところです。
※回答者
弁護士 柳澤修嗣（2019.5）