相続放棄について①
相談内容私は若い頃から東京に出て生活していますが、一人で実家に住んでいた母が3年前に
死亡しました。私のほか相続人は弟だけですが、弟も都会に出て生活しているため実家の
土地建物は私が相続しました。
しかしその後、建物はずっと空家にしており、農地も取得または耕作希望者がいないため
管理の費用ばかりかかるので困っています。これから相続放棄はできないでしょうか。
解答
民法は、法律上相続人となる人も、相続を希望しない場合には相続放棄をして相続人とならない
ことを選択できることになっています。一般的には、死亡した人のプラスの財産よりも借金等の
マイナスの財産のほうがはるかに多い場合に相続放棄がなされてきましたが、遺産がプラスの財産
であっても離れた故郷にある不動産で、相続人が都会に住んでいるため管理ができず処分もできな
い物件も見られます。
ところで相続放棄の手続は、相続人となるべき人が自分のために相続が開始したことを知った時か
ら3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出して申立てることになっています。3か月
の期間制限は、相続による権利関係の帰属を早期に確定し法律関係を安定させるために規定されて
いるものです。相談者は、母が死亡し不動産を相続して3年経過してから不動産を相続しなければ
よかったと思うようになったわけですが、3か月を超えてから考えが変わったことを理由に放棄の
手続をとることはできません。
【相続放棄の手続の期限】
相続人となるべき人が自分のために相続が開始したことを知った時から
3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出して申立てる。
弁護士 佐藤 豊(2018.11)