離婚するには?
相談内容私は、結婚して10年になりますが、現在離婚を考えております。離婚をするにはどのような方法が
あるでしょうか。また、どのようなことを決める必要があるのでしょうか。
解答離婚をするには大きく分けて三つの方法があります。
協議離婚、家事事件手続法に基づき調停申立てによる調停離婚、人事訴訟法に基づき離婚の訴え提起に
よる裁判離婚の三つです。
協議離婚以外はいずれも家庭裁判所の手続による離婚です。なお、調停申立による離婚には審判離婚が
あり、また離婚の訴えによる離婚には和解による離婚、認諾による離婚があります。
1. まず、協議離婚ですが、当事者間の話し合いにより離婚届を市町村役場に提出する方法で、離婚の
手続としては一番簡便な方法です。(民法763条、764条、739条1項、戸籍法76条)。届出に
より離婚が成立します。
ア) 協議離婚による離婚では、当事者間で離婚することの合意がなされることが必要です。
また、未成年の子供がいるときは親権者に父親、母親のどちらがなるかの合意も必要です。
離婚届出書には親権者を記載する欄があり、親権者を誰にするかの記載がないと、離婚届は
原則受理されません。
イ) 協議離婚の合意について、必ずしも書面に纏める必要はありませんが、後日、合意内容について
争いが生じないように書面化しておくことが重要です。そして決める必要がある事項として、離婚
に伴う親権者の指定、子の監護に関する処分、離婚給付(財産分与・慰謝料・年金分割)等があり
ます。
ウ) 離婚に伴う親権者の指定、子の監護に関する処分について
婚姻中は夫婦が共同して親権を行使します(民法818条1項)。しかし協議上の離婚をするときは、
その協議で、父母の一方を親権者と定めなければなりません(同819条)。民法766条は、協
議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子の面会及びその他の交流、子の監護
に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項を定めると規定しています。子の監護に
ついては養育費用の分担と面接交渉の定めが重要となります。
エ) 離婚給付(財産分与・慰謝料・年金分割)について
婚姻期間が長い場合は、夫婦共通の財産が形成されているのが普通です。例えば結婚後に住宅を建
てた場合は、住宅が仮に夫の名義であったとしても夫婦共通の財産とみなされるのが普通です。
離婚せずに夫婦の一方が死亡した場合、配偶者は相続人として一定の割合により死亡した配偶者の
遺産を承継しますので、夫婦共通の財産の清算は相続という形で行われます。しかし、離婚の場合
は相続人にはなれませんので、夫婦共通の財産の清算をする必要があります。これが財産分与とい
われるものです。次に、離婚原因が夫婦の一方の行為に基づく場合、他方当事者は離婚原因を作っ
た相手方に対し損害賠償請求することができます。離婚原因が夫婦の一方の不貞行為であった場合、
不貞行為を行った相手方に対し慰謝料を請求することができます。
離婚に伴い年金を分割するという制度が平成16年6月に創設され、平成19年4月1日から施行
されました。
年金分割には、合意分割と3号分割の二つがありますが、年金分割は離婚後2年以内に請求する必
要があります。
年金分割については紙幅の関係上説明できませんが、離婚に伴う制度として重要な制度ですので、
離婚を考慮される場合は専門家に相談されることをお勧めします。
なお、夫婦には婚姻費用の分担義務がありますので、別居中は、夫(妻)に対し生活費の請求がで
きます。算定表を基に計算されます。
2. 調停離婚も裁判離婚も、調停調書、判決書等が作成されます。しかし、調停成立時、判決確定時に
離婚が成立し、市町村役場に届け出る義務があります。調停調書、判決書はいわゆる債務名義と呼ばれる書面
で、養育料等の支払がなされない場合。調停調書、判決書によって相手方の財産について強制執行することが
できます。協議離婚の合意書はこのような強制執行力はありませんが、離婚協議書が公証人が作成する公正証
書による場合は、金銭債務については強制執行力があります。
協議離婚及び調停離婚は当事者の合意を前提としますので、協議離婚、調停離婚が成立しない場合、家庭裁判
所に離婚の訴えを提起することができます(民法770条)。
※回答者
弁護士 田中 善助(2018.7)