働き方改革での副業・兼業について
相談内容働き方改革によって、副業・兼業ができるようになるそうですが、労働時間が増えて、逆に働きすぎに
なるのではないでしょうか。
解答労働時間管理と社会保険関係で注意する必要があります
政府の副業・副業の促進に関するガイドラインを一部要約して紹介します。
Ⅰ 現状
1.副業・兼業を希望する者は年々増加傾向にある。
2.多くの企業は自社の業務への専念が削がれることや情報漏洩を理由に
就業規則で副業・兼業を禁止している。
3.労働者が労働時間以外の時間をどう使うかは、基本的に労働者の自由で
あり、企業がそれを制限するのは労務提供上の支障がある場合や利益を
害する場合であると考える。
Ⅱ メリット
1.離職せずに他の職に就くことが可能になり、スキルや経験を得て労働者
が主体的にキャリアを形成できる。
2.自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求することができる。
3.所得が増加する。
4.将来の起業・転職に向けた準備ができる。
Ⅲ 留意点
1.就業時間が長くなる可能性がある。
2.職務専念義務、秘密保守義務、競業禁止義務を意識する必要がある。
3.1週間の所定労働時間が短い業務を行う複数の事業場で行う場合は、雇用保険の
適用がない。
副業・兼業を希望する者は確かに多いのかもしれません。企業の副業・兼業禁止条文が
それを阻んでいるとしていますが、労働者の職務専念義務が削がれてしまうことが心配です。
仕事以外は労働者の自由時間ですが、休息や私的な時間に充てるのが自然な考え方です。
その自由時間を犠牲にして労働する者は金銭的な必要性によることが多いのではないで
しょうか。確かに副業・兼業は働きすぎになる可能性を含んでいます。
メリットでは、所得増加とともに労働者のスキルアップ、キャリア形成、自己実現、起業
などを挙げていますが、労働者目線の現実から離れていると思います。
副業・兼業によって労働した時間外労働の割増賃金については、労基法38条2で規定されて
います。
2以上の事業場で勤務する場合、それぞれの事業場の労働時間は通算され、その通算した
時間が法定労働時間(1日8時間)を超えると時間外労働となり、割増賃金の支払い義務が
生じます。多くは2番目の事業場で支払うことが考えられますが、その場合1番目の事業場
の労働時間をどのように把握し算定するのか、長時間労働に伴う健康管理は労働者任せでい
いのか、企業の安全配慮義務はどうなるのかなど、実務上の課題が山積みです。
雇用保険では、異なる事業場の労働時間は通算されませんので、複数の各事業場で週20時間
未満である場合、雇用保険に加入できません。
社会保険では、20時間以上で2つ以上の事業場で働く場合、企業の規模によっては、それぞれの
事業場の報酬を合算して社会保険料が決定されます。
働き方改革では、この他に時間外労働の限度基準上限設定による長時間労働削減が掲げられて
いますが、一方で裁量労働制の拡大によって時間外労働規制が緩められようとしています。
働き方改革の今後の動向に注目してください。
※回答者
特定社会保険労務士 山口正人(2018.3)