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成年年齢の引き下げと養育費

相談内容

 約10年前に離婚し、私が親権者になって子を育てています。離婚の時の取り決めで、養育費を

支払う期間を「成年に達する月まで」としていたのですが、成年年齢が20歳から18歳に引き下げ

られることに伴って、養育費も子が18歳になった後は支払ってもらえなくなってしまうのでしょうか。

解答

 成年年齢が引き下げられるからといって、養育費を受け取れる期間が、一律に子が18歳になる

までに短縮されることにはなりません。

 未成熟子の両親は、婚姻関係にあるかどうかに関係なく、未成熟子に対して扶養義務を負います。

両親が離婚すると、父母のうちのどちらか一方が未成年者の親権者になります。

近時、家族のあり方は多様化していますが、割合としては親権者となった親が未成年者を監護する

ケースが多いといえるでしょう。この場合、実際の監護を行っていない親も、養育費の負担という

形で扶養義務を果たすことになります。

 ところで、来年(2022年)の4月1日から、民法上の成年年齢が現在の20歳から18歳に引き

下げられますが、令和元年12月に最高裁判所が公表した司法研究では、民法改正(成年年齢の引き下げ)

養育費の支払義務の期間に与える影響について、次のように説明されています。

 

 ・改正法の成立又は施行前に養育費の終期として「成年」に達する日までなどと定められた協議書、

  家事調停調書及び和解調書等における「成年」の意義は、基本的に20歳と解するのが相当である。

 ・改正法の成立又は施行自体は、当事者間の協議、家事調停、和解、家事審判及び離婚判決において、

  既に合意や裁判により満20歳に達する日までなどと定められた養育費の支払義務の終期を18歳に

  変更すべき事由にはならない。

 ・養育費の支払義務の終期は未成熟子を脱する時期であって、個別の事案に応じて認定判断される。

  未成熟子を脱する時期が特定して認定されない事案については、未成熟子を脱するのは20歳となる

  時点とされ、その時点が養育費の支払義務の終期と判断されることになると考える。

 

 このような研究成果を前提とすると、離婚の時に取り決めた「成年に達する月まで養育費を支払う」

という合意の意味は、「20歳に達する月まで養育費を支払う」という意味に解釈され、民法改正で成年

年齢が20歳から18歳に引き下げられた後も、子が20歳になるまで養育費を受け取ることができる

ことになります。

 ただし、「未成熟子」の意味は、「20歳に達しない子」と完全にイコールではなく、経済的に独立して

自分の生活費を獲得することを期待すべきかどうかといった視点から、個別の事案に応じて判断されます。

例として、子が高校を卒業して20歳になる前に就職し、自分の収入で生活していける能力を備えた場合

には、未成熟子を脱したといえるでしょう。

※回答者

弁護士 田中 良平(2021.7)

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