くらしなんでも相談Q&A

改正相続法による相続と登記

相談内容

先日父が死亡して私と弟が父の遺産を相続することになりましたが、父は住んでいた土地を

私に相続させると記載した公正証書の遺言をしていました。この場合、土地の登記は父の名

義のままにしておいても特に問題はないと言われましたが、間違いありませんか。

解答

公正証書による遺言では、特定の遺産を特定の相続人に取得させたい場合、一般的に「相続

させる」との表現が用いられています。最高裁判所は、「相続させる」との遺言によって不

動産を取得した場合、登記をしなくてもその取得を第三者に対抗できると判断していました。

その意味では、この場合は登記をしなくてもあまり不利益はありませんでした。

 しかし2019年71日以降の死亡(相続)に適用される改正相続法では、このような場

合も登記をしなければ「法定相続分を超える権利の取得」を第三者に対抗できないことにな

りました。この土地を取得した登記をしておかないと、弟から法定相続分2分の1を買い受

けて登記をした取得者や弟の法定相続分の差押をしてきた弟の債権者に対し、この土地は遺

言により全部自分が取得したということを言えなくなってしまいます。

 所有者不明土地が社会的に問題とされるようになってきましたが、相続登記がなされない

ことも原因の一つと指摘され、2021年に相続登記等の申請を義務化する不動産登記法の

改正がなされたほか、相続開始から10年を経過したときは寄与分などの規定は適用しない

ものとして遺産分割を簡明化し、遺産分割が長期間未了のまま放置される土地の解消を図る

相続法の改正がなされ、2023年4月頃に施行されることが予想されています。遺産分割

は可能な限り早期に解決を図り、分割できたら登記等をきちんとすることが求められます。

※回答者

弁護士 佐藤 豊(2021.9)

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