地盤沈下のため曳家工事をし、基礎工事後、再度もとの位置に戻した家がまた狂ってきた。業者は責任ないというが・・・。
相談内容20年前新築した家が地盤沈下のため、同じ業者に依頼し10年前、家を曳き、基礎工事・土台をやり直しその上に戻す曳家工事をやった。
しかし数年前からまた家が狂って来たので欠陥住宅検査を受けたところ、基礎と土台がアンカーボルトで止めてないことも原因の一つといわれた。
工事請負業者と設計士は曳家工事の場合はアンカーボルトの必要はない。壁がついている状態では柱等、水平、垂直も取りようがないという。
改修費用は相当掛かるといわれているがお金のことではなく、一言、設計士に謝ってもらいたいが、どうしたら良いか。
建物の設計・施工に当っては、地盤の状況に適した基礎を選択し、施工しなければならず、地盤沈下により家に不具合が生じた場合は、設計業者又は施工業者に責任が認められる可能性が大きい。
しかしこの責任は、民法によると木造建築の場合は引渡から5年間、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)でも10年間に限られるので、この場合は既に期間を経過していることになる。
法的責任はともかく、現在住んでいる家の安全性等にもかかわるので建築の専門家によく調査してもらい、また工事の際は施工業者の施工をチェック(監理)してもらうことが必要。
なお、法律で相手に謝らせることはできない。
○品確法は消費者が少しでも安心して住宅取得できるように制定されたもので3つの骨子からなる。
①住宅性能表示制度(任意)
全ての新築住宅の性能に、比較し易いように共通の物差し(表示方法・評価基準等)を設定し、第三者機関がこれを評価し表示する制度。
②住宅に係わる紛争処理体制の整備
住宅性能表示制度を活用した住宅に欠陥やトラブルが発生した場合、裁判外の紛争処理を円滑化・迅速化する。
③瑕疵担保責任の特例(義務化)
新築住宅の取得契約(請負・売買)で、引渡し後10年以内に、基本構造部分に瑕疵(欠陥)が見つかった場合、無料補修等の請求ができる(瑕疵担保責任を10年間と義務付)。
尚、住宅性能表示は任意のため、利用するかしないかは業者又は取得者の選択による。
○住宅監理 完成した後では建物の品質は確認し難いので、建築施工時に十分な品質管理を行う必要がある。
一般的に建築主は素人のため、専門の監理者に監理を依頼するが、建築主の要求条件を理解し設計意図も主張し易い設計者を監理者に委任することが多い。
監理者(監理技術者)は、建築主の委任を受け、工事が正しく施工されるよう指示・検査・試験・立会・確認・審査・承認・意見・協議などを行う。
施工業者の提出する施工図、模型、請求書を技術的な側面から検討し、客観的な立場で「承認」も行うため、建築主側の立場に立って監理できる人を選任することが重要。
弁護士 佐藤 豊