明治時代の抵当権設定
相談内容今度、家を建て替えることになり、自分名義の宅地を担保に入れて銀行の住宅ローンを借りる手続きを進めている。
しかし、登記簿を見たら、明治43年に当時50円の債権額で抵当権が設定されていた。
銀行では、このような古い抵当権でも抹消してもらわないと融資はできないと言うが、抵当権者の名前を見ても全く知らない人で、どうしたら良いか分からない。
抵当権者の住所を調べ、本人又はその家族が、その住所に住んでいるかどうかを確認する。
住んでいないようなら、その住所に宛てて内容証明郵便を出す。
当然返送されて来るので、その後、債権額、利息、損害金を計算して供託し、それを基に抵当権の抹消登記をする。
もし、その住所に本人又はその家族(相続人)が住んでいれば話し合い、本人又は相続人が了承すれば抹消できる。
話し合いがまとまらず本人又は相続人が拒否したら裁判をすることになる。
【休眠担保権と債権者不確知】
抵当権者が行方不明で、債権の弁済期から既に20年以上経過している場合を「休眠担保権」というが、休眠担保権は債権額・利息・損害金を供託することによって、不動産の所有者が単独で抵当権の抹消登記をすることができる。
明治時代から残っている抵当権が担保されている債権は、既にその債権者が存命している可能性が少なく、債権者の相続人も探しようがない。
不動産所有者が、債務を弁済して抵当権を抹消してもらいたくても、弁済ができないまま抵当権を抹消できないという不利益を抱え続けることになる。
そのため、「弁済したいが、債権者が行方不明で受け取ることができない」(債権者不確知)という弁済供託をすることで、不動産の所有者が単独で抹消登記をすることができる。
供託方法は、債権額・利息・遅延損害金の合計額を算出して、それを一度に供託するが、現在の貨幣価値に換算する必要はなく、債権額は額面のままで計算する。
司法書士 徳竹春近