定年以降も同じ職場で勤務したいのですが〈3〉
相談内容【事例】もうすぐ定年を迎える男性からの質問
半年後に60歳定年を迎える者です。今年から厚生年金の支給開始年齢が61歳に引き上げられ、すぐに年金がもらえなくなったと聞きました。年金収入がない のに、このまま定年で退職する訳にもいきません。勤務先からの話によれば、定年後も65歳まで継続して勤務できる制度があるとのことです。そこで、次の3 点について質問があります。
③定年制度そのものについて疑問に思います。年齢差別ではありませんか
③定年制度は年齢差別か?
定年制度は、これまで終身雇用制がとられてきた日本の企業において長く採用されてきた歴史があります。採用から定年退職までひとつの企業で働き、定年を 迎えて退職するというスタイルは一昔前までは当り前のことでした。しかし、近年は中途で転職することも珍しくなく、また派遣労働者や非正規労働者、有期契 約労働者など多様な働き方が増加し、以前と労働環境が大きく変わってきています。こうしたことから、ご質問のように定年制そのものに疑問を持つ方も増えて きていることも事実です。しかし、これまでの日本の雇用社会で前述のとおり定着してきた定年制度を、いきなり年齢差別と認めることができるでしょうか。そ もそも年齢を重ねることはすべての人間に等しい現象であって、それを差別要因とするならば、年齢に伴って賃金が上昇する年功型賃金制度は、若年者に対する 差別となってしまいます。また、定年制度は企業にとって、若年労働者の雇用や昇進の機会を開く一面もあり、合理性があることも見逃せません。さらに、定年 制度を年齢差別として禁止すれば、年齢を問わずに労働者の実力を主体として雇用維持の判断をする事態となり、実力が伴わなければ即時解雇となることも想定 され、労働契約法16条の解雇規制と相反してしまいます。
このように、相対的に考えると、一慨に定年制度を年齢差別と決めつけることはできないと思います。
特定社会保険労務士 山口正人