相続特集【親の面倒を見てきたが・・・】
相談内容父が12年前に死亡し、相続手続きをしていなかったところ、母が昨年亡くなった。相続人は、長女、二女、長男の3人。父が亡くなった後は、長男、長女が 遠方に居を構えているので、二女の自分が父名義のままの実家に夫ともども移り住み、母の身上監護にあたり、最期を看取った。母の亡くなった今も実家に居住 している。ところが、ある日突然に、長男より家の明け渡しを求める調停を申し立てられた。どうしたらよいか。
解答長男の調停申し立ての趣旨は、「長男の自分が父名義の実家の土地建物を相続したいので、出て行くように」ということのように考えられる。実家の土地建物 のみが相続財産であるとした場合、前の事例(代償分割の活用について)と同様の問題もあるが、相談者には、法定相続分として三分の一の権利があるので、直 ちに家を明け渡さなければならないという理由はない。また、十年以上母親の面倒を見てきたのであれば、寄与分を主張することも可能と思われるので、そのこ とも念頭に調停を進める。
共同相続人中に、被相続人の財産の増加や維持に特別の働き(特別の寄与)をした者がある場合に、相続財産からその寄与分を控除したものを相続財産とみなして各相続人の相続分を計算し、寄与者にその控除分を取得させることによって共同相続人間の公平を図る制度です。
●被相続人に特別の寄与をした者がいる場合の相続分(寄与分)は
1.相続人の中に、被相続人の事業を手伝った、金員などの財産の給付をした、病気を看病した、その他財産の増加などに特別の働きをした者がいる場合は、 その者の働きの評価額(寄与分)を共同相続人間で協議して決定し、その評価額を相続財産から引いた残額を「遺産」と仮定して相続分を計算します。
2.特別の働きをした相続人は、「遺産」の法定相続分にあらかじめ引いておいた評価額(寄与分)を加えた分が相続分となります。
3.寄与分の存在やその額について相続人間で話し合いがつかない場合は、特別の寄与をした者は家庭裁判所に審判を求めることができます。
4.家庭裁判所は、寄与の時期や、方法、程度、遺産の額などといった一切の事情を考慮して寄与分を決めます。
司法書士 北川 哲男