相続放棄後の遺産の管理
相談内容10年以上前に父が死亡しましたが、父は負債が多くあり,相続人の母、兄、私は
いずれも相続の放棄をしました。そのため、父の相続人はいません。
ところが、最近になって市の方から父の遺産である建物が倒壊しそうであるため
娘の私に何らかの対応をしてほしいと言われました。
私は、既に父の相続を放棄しているのに、父の遺産の建物の管理、処分等の対応を
しなければいけないのでしょうか。
解答民法第940条は、「相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が
相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、
その財産の管理を継続しなければならない。」と定めます。
したがって、相続を放棄したとしても、新たに管理する者が現れるまでは、継続して
遺産を管理しなければいけないことになります。
しかし、 放棄をしたのに相続財産の管理をすることは負担となるでしょう。
また、相続の放棄をした場合、遺産の建物の管理を超えて取り壊しといった処分まで
することはできません。
では、どのような対応をするのがよいでしょうか。
ここで、相続財産管理人の選任という方法が考えられます。
亡父に関しては、全ての相続人が相続放棄をしており、相続人が不存在となるため家庭
裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てることができます。
相続財産管理人が選任されれば、遺産についての管理をしてくれますので相続放棄した
者が遺産について責任を負うことがなくなります。
また、建物を取り壊す必要があれば相続財産管理人が対応をしていくことになります。
ただし、この場合,申立てに際しては相当程度の予納金を負担することになるでしょう。
※回答者
弁護士 柳澤修嗣(2022.3)