予め相続放棄できるか
相談内容私たちは3人兄弟ですが、長男は親や私たちとも円満な関係を欠き迷惑をかけてきたことから、
父が死亡した場合に相続でもめるのではないかと心配です。
父はまだ健在ですが、今のうちに父の相続につき長男に放棄させるようなことは可能ですか。
解答相続の放棄については、「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内に
しなければならない。」と規定されており、お父さんの相続は死亡により開始することから、
お父さんが生存中に予め長男に相続放棄をしてもらうことはできません。
年齢等からしても通常、お父さんは長男より先に死亡すると予想されますが、長男も事故や病気に
よりお父さんより先に死亡することがないとは言えません。
お父さんの相続人等は死亡したときに確定するので、確定してもいない相続を予め放棄することは
できないのです。
予め相続放棄をすることはできませんが、相続開始前に家庭裁判所の許可を得て遺留分の放棄をして
もらうことは可能です。
遺留分の放棄が認められると、お父さんは遺言により長男の遺留分への配慮をせずに遺産の処分を
決めることができますが、家庭裁判所では遺留分の放棄の許可に当たり、長男の意思を確認するほか
長男が放棄する理由の合理性、代わりに受ける利益等を総合して判断されるので、これらの点で相当
な理由がないと許可は難しいとされています。
※回答者弁護士 佐藤 豊(2022.9)