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【親もなく独り者の甥の財産】

相談内容

独身で、妻も子供もいない甥が昨年亡くなった。甥の両親は既に死亡しており、祖父母もだいぶ昔に亡くなっている。
自分は、甥の為に大学の学費を出してやり、また何かと日常生活の相談にものって金銭的な援助をしてきた。
甥の遺産としては、甥名義の自宅と預貯金がある。
この甥の遺産はどのようになるのか。

解答

人が死亡すると相続が開始し、被相続人の財産に属した一切の権利義務が相続人に承継される(民法882条・896条)。
被相続人の子は相続人となるが、被相続人の子が相続の開始以前に死亡したときは、その者の子が相続人となる。これを代襲相続という(民法887条)。
民法887条の規定により相続人となるべき者がない場合は、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる(民法889条)。
①被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
②被相続人の兄弟姉妹。兄弟姉妹についても代襲相続がある。
被相続人の配偶者は常に相続人となるが、被相続人の子、直系尊属、兄弟姉妹等がいるときは、その者と同順位となる(民法890条)。
相談者の場合、死亡した甥には配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹等がいないので、相続人はいないことになる。
このような場合、相続財産は法人とされ(民法951条)、家庭裁判所は利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならないとされている(民法952条)。
以後、相続財産管理人によって、相続債権者等に対する弁済、相続人の捜索の公告がなされる(民法957条、958条)。
相続債権者等への弁済がなされ、相続人の捜索の公告がなされても、相続人として権利を主張する者が現れなかったときは、家庭裁判所は、相当と認めるとき は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存 すべき相続財産の全部又は一部を与えることができるとされている(民法958条の3)。
この請求は、相続人の捜索の公告の期間満了後3ヶ月以内にしなければならないので注意を要する。
なお、相談者は、甥の為に大学の学費を出してやり、日常生活の相談にものって資金的な援助もしたということなので、特別縁故者として家庭裁判所に相続財産 の分与請求をすることができる者と言える。この特別縁故者は民法952条による利害関係人とされているので、相談者は相続財産管理人の選任の申立を家庭裁 判所にすることが出来る。
そして、相続人が現れなかった場合、特別縁故者として家庭裁判所に相続財産の分与の申立をすることが出来る。
特別縁故者への分与後なお残存する相続財産は、国庫に帰属することになる(民法959条)。

※回答者

弁護士 田中善助

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