使途不明金は遺産分割の対象になるか?
相談内容一人暮らしをしていた母が亡くなり、私と妹が遺産を相続することになりました。
遺産である母の預金を調べてみると、母の生存中に生活費とは思えない大金が
引き出されていました。母が預金の払い戻しを任せていた妹が無断で引き出して
使い込んだものと思われます。遺産分割協議の際に、勝手に妹が使い込んだ額を
遺産に加えて分割することはできますか。
解答寿命が延びるにつれて、預金の払戻等に出向いたりすることができなくなり、親族等が
援助している高齢者が増えてきました。
死亡した後に預金の払い戻しの経過を知った相続人が不信感を募らせ、遺産分割の際に
対立の原因となる事案が多くなってきました。
預金を引き出した者が特定され、その使途につき納得できる説明がなされるか、逆に使い
込みを認めて賠償等につき合意できる場合は、遺産分割調停において解決することが可能
になりますが、これらの点に争いがある場合は、別途、損害賠償請求訴訟等で判断してもらう
ことになり、遺産分割の事件では解決できないことになります。
遺産分割は実際にある遺産の分割であり、無断で預金から引き出された使途不明金は、理由は
ともかく遺産としては存在しないからです。
預金の管理等を託された人は、相続人予定者に定期的に報告する等してあらぬ疑いを抱かれない
よう配慮することも必要です。
※回答者
弁護士 佐藤 豊(2023.9)