【債務が多い遺産の相続】 夫の死後、債権者から返済の催促が・・。
相談内容H21年12月に夫が病気で急逝した。
その後、間もなくして、夫の債権者から返済の請求が来たが、どのようにしたらよいのか全く分からず困っている。
相続人は妻の自分と、子供1人である。
相続人は、配偶者と子供であり、相続分はそれぞれ2分の1となる。
相続には「単純承認」、「限定承認」、「放棄」があるが、単純承認は特に手続は必要なく、無限に被相続人の権利義務を承継することになる。
これに対し、限定承認や放棄は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に、相続放棄あるいは限定承認の申述を家庭裁判所に行う必要がある。
この3ヶ月という期間は、利害関係人の請求によって伸長して貰うことが出来る。
なお、3ヶ月以内に相続放棄あるいは限定承認の申述をしない場合は、単純承認したとみなされる。
遺産のうち、積極的財産(プラスの財産)と消極的財産(マイサスの財産)を比べ、積極的な財産の方が多ければ単純承認をすればよい。
もし、消極的財産の方が多ければ、相続の放棄をすればよい。
積極的な財産と消極的財産を比べ、判断がつかない場合は、限定承認をする。限定承認は、共同相続の場合、共同相続人全員が共同してのみ行うことが出来る(民法923条)ので、相続人全員の合意が必要。
限定承認は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることになり、相続人固有の資産 に影響を与えない相続方法である。しかし、相続財産と相続人固有の財産を分離して管理する必要があり、弁済手続も民法によって決められているので、注意を 要する。
遺産の評価について、不動産等は専門的な知識が必要であり、弁護士等の専門家に相談する必要があると考える。
【相続放棄】
相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も全く相続しないというもので、相続開始を知ってから3ヶ月以内に家裁に申立て、家裁が放棄の申述を受理する旨 の審判をすることによってその効力が生じ、その相続人は、初めから相続人でなかったものと看做される(相続放棄申述証明書の交付)。
しかし、相続人が単純承認した後に、遺産を取得しないことを俗に「相続分の放棄」というが、遺産分けで「何もいらない」と言って遺産を受取らないことは、 厳密な意味での放棄ではない。そのため、法的な手続きをして相続放棄した者はプラスの財産もマイナスの財産も継承しないのに対し、相続分の放棄をしたとし ても、借金などの相続債務を免れることはできないので注意が必要。
財務省統計によると、H19年分年間死亡者数に対する相続税課税対象者となった被相続人数の割合は4.2%で、過去4年間同率で推移しています。
基礎控除額(5,000万円+1,000万円×法定相続人の数)がありますので、一般の人にとって相続税はあまり縁のないもののように思われます。
しかし、亡くなった人に債務があった場合の相続については、思いがけない状況にもなり兼ねない難しい問題が発生します。手続きには期限がありますので、一日も早く、弁護士など専門家に相談することが大切です。
弁護士 田中善助