不在者財産管理人と代襲相続
相談内容独り身の叔父(父の弟)が亡くなった。自分は兄と2人兄弟だが、父亡き後、自分が叔父の身の回りの面倒を見てきたので、叔父の遺産(預貯金)を相続したい。
叔父は6人兄弟で、生存する4人は相続放棄しても良いと言っているが、父の代襲相続人である自分の兄が叔父の葬儀後に全く連絡が取れなくなってしまった。
どのような手続をとったらよいか。
叔父の兄弟4人が相続放棄しても、相続人の1人が行方不明のため手続ができない限り、相談者への相続はできない。
行方不明の期間が7年以上の場合は、不明者の失踪宣告の申立てを行うが、それ以内の場合は、家庭裁判所で不在者財産管理人を選任のうえ、財産管理人との間で遺産分割の協議を行う。
この遺産分割協議は裁判所の許可のもとに行われ、基本的には不在者の法定相続分の保護が図られるので、叔父兄弟4人が先行して相続放棄を行うと、不在者(兄)の法定相続分が増加するので、注意を要する。
相談者の相続分を多く確保したい場合は、叔父兄弟4人から相続放棄に代えて相続分の譲渡を受ける方法がある。
【不在者財産管理人】
○従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者(不在者)に財産管理人がいない場合に、家庭裁判所は、申立てにより、不在者自身や不在者の財産について利害関係を有する第三者の利益を保護するため、財産管理人選任等の処分を行うことができる。
選任された不在者財産管理人は、不在者の財産を管理、保存する他、家庭裁判所の権限外行為許可を得た上で、不在者に代わって遺産分割、不動産の売却等を行うことができる。
なお、不在者財産管理人には、特別な資格は必要ないが、物事の処理を客観的にできる人が望ましく、家庭裁判所に法律専門家(弁護士、司法書士など)を候補者として推薦することが多い。
【代襲相続】
○被相続人の相続開始以前に本来であれば相続人となるべき者(法定相続人)が死亡している場合に、その者の代わりに、その直系卑属が相続人となること。
代襲相続は、子が相続人となる場合と、兄弟姉妹が相続人になる場合がある。 子が相続人の場合は、被相続人からみた孫が代襲相続人となり、兄弟姉妹が相続人の場合は、被相続人からみた甥や姪が代襲相続人になる。
但し、子が相続人の場合は、その者の子(被相続人からみた孫)が亡くなっていても、さらにその子(被相続人からみた曾孫)がいる場合は、その者にも代襲相 続が認められる(再代襲)が、兄弟姉妹の場合はその子(被相続人からみた甥あるいは姪)までしか代襲相続は認められない。
○代襲相続の原因は、前述の法定相続人死亡による他、「相続欠格」と「相続人の廃除」も原因となる。
○代襲相続人の相続分 代襲相続人は被代襲者の相続分をそのまま受け継ぐ。同一の被代襲者に複数の代襲相続人がいる時は、被代襲者の相続分を均分する。
○相続分の譲渡 自分の法定相続分を遺産分割の前に、他の相続人又は第三者に、有償・無償を問わず譲渡することができる。
なお、相続分を譲渡した者は相続人としての地位を失うが、債務については、債権者を害さないために譲渡後も譲受人と並んで債権者に対して責務を負う。
司法書士 北川哲男