離婚特集【3年以上の生死不明】
相談内容結婚して20年になるが、妻が2年半前に家出をしたまま、連絡がまったく取れない状況にある。離婚を考えているがどのようにすればよいか。
解答相手方と連絡が取れない場合は、裁判離婚によるしかないが、裁判離婚の場合は、民法に定める特別な「離婚原因」がない限り、離婚は認められない。離婚原 因のひとつに「配偶者の生死が3年以上明らかでない時」というものがあるが、2年半前ではこの要件を充たさないのでもう半年以上待つ必要がある。ただし、 音信不通であっても、生存がはっきりしているような場合は含まれないので、注意を要する。また、どうしても、半年も待てないという事情があるのであれば、 妻に2年半にわたり家庭に戻る意思がないものとみなして、「婚姻を継続しがたい重大な事由」という法定離婚原因をもって離婚請求できる可能性もなくはな い。
【3年以上の生死不明について】
民法の定めている法定離婚事由の「3年以上の生死不明」の場合とは、最後の消息があった時から計算して、生きているのか死んでいるのか分からない状態が 3年以上続いているという意味である。音信不通であっても、生存がはっきりしているような場合は含まれない。居所が分からなくても生きていることがわかっ ている場合は、「生死不明」ではなく「行方不明」である。生死不明とは、生きているのか死んでいるのか確認できない状態をいい、単なる別居や行方不明は含 まれない。また、所在がわからない場合でも、生きていることが推定される場合には生死不明とはいえない。ただし、所在不明の状態が長期間継続すれば生死不 明と推定することができる。また、生死不明の原因、理由あるいは生死不明者の過失は問わない。したがって、配偶者に3年以上の生死不明の状態が続けば、そ の原因、理由あるいは配偶者の過失やせめられるべき事情の有無を問わず、そのことのみで離婚原因になる。なお、3年以上の生死不明により離婚の判決が確定 したときには、その後当人が姿を現しても判決が取り消されたり無効になったりすることはない。
司法書士 北川 哲男