離婚特集【債務名義とは?】
相談内容妻との離婚協議は基本的に成立しているが、妻が知り合いより家裁に行って書類を作ってもらった方が良いと言われたと言っている。どういう意味か?
解答「家庭裁判所に行って書類を作ってもらう」とは、恐らく、家裁に離婚調停を申し立て、離婚成立を調停調書にするという意味かと思われる。離婚の成立条件に は、通常、慰謝料、養育費、年金分割など金銭の支払いに関する事項がある場合が多い。これを私文書の協議書作成としたときは、支払い義務のある者(債務 者)が支払いを怠った場合には、支払いを求めて民事裁判を起こして確定判決(これを「債務名義」という。)を得なければ、債務者の財産に対して強制執行で きないが、これに対し、調停調書がある場合は、調書には判決と同等の効力が認められる債務名義となるため、簡単な手続で強制執行が可能となる。本来、離婚 調停は、当事者間に離婚協議が成立しない場合に利用される裁判制度であるが、将来の相手方の支払いを担保するために調停を利用する場合もある。
【債務名義とは?】
債務名義とは、強制執行手続きをするために必ず必要になるものである。債務名義について簡単に説明をすると、お金を請求する権利を公的に認めた書類のこと をいう。 例えば、お金の貸し借りのときに作成する契約書は、当事者間でお金の貸し借りを約束しただけのもので、そのままでは債務名義にはならない。その お金の貸し借りを証明する契約書を元に裁判を起こすなどして、勝ったときに手を入れるものが債務名義となるわけである。裁判で勝てばお金を請求する権利を 公的に認めたことになるので、強制執行という手続きも可能になる。債務名義には、主に次のものがあげられる。
・確定判決
・仮執行の宣言を付した判決
・仮執行の宣言を付した支払督促
・和解調書
・調停調書
・審判
・執行証明(一定の要件を備えた公正証書のこと)
これらは、ほとんどが裁判所で作成する公的な書類となっているが、一つだけ裁判所が作成したものではないものがある。それが執行証書というもので、一般に は“公正証書”と言われている。とはいえ、公正証書であればどんなものでも債務名義となるわけではなく、①公証人が作成した公正証書であること、②金銭の 一定額の支払またはその他の代替物もしくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求を内容としたものであること、③債務者が直ちに強制執行に服する旨 の陳述が記載されていること、の要件を充たしているものが債務名義となる公正証書になる。
司法書士 北川 哲男