【営業補償と修理代。生活困窮者なので自賠責で賠償して欲しい。】
相談内容息子は5年前からパートで午前2:00~7:30の1日5時間勤務で働いている。2ヶ月前、軽自動車を運転して会社に向かっている時に停車中の営業車に追突した。
息子の軽自動車は大破し、相手の営業車もかなり破損した。相手の運転手にケガはない。息子は1ヶ月入院し現在自宅療養中。
実は、生活が苦しく任意保険に入る余裕もなく未加入であった。過失割合は100対ゼロで、営業車の修理代と営業補償で約200万円の請求が来ている。
自分は1人暮らしで、息子夫婦も子供と4人家族で、つつましく倹約して生活をしているが貯金もない。どのようにしても用意できない。貸してくれる所もない。
こんなに苦しい生活をしている者には、特別に自賠責保険で何とか支払ってもらうことはできないか。
自賠責保険は、怪我等の人身損害だけを対象としているので、修理代等の物損は自賠責保険で支払ってもらうことはできない。
損害賠償を支払えない場合、訴訟等を起こされ、判決に基づき給料の差押を受けることも予想されるが、給料の差押は原則として4分の1の額までしか許されず、全額差押えられることはない。
【自動車損害賠償責任保険】
〇自賠責保険は、自動車・原動機付自転車の所有者と運転者が加入を義務づけられている保険で、被害者の救済を第一の目的としており、死傷した相手側の運転 者とその同乗者、あるいは歩行者などの対人賠償に限られる。被害者のケガや死亡だけに賠償金が支払われ、加害者のケガや自動車の破損(物損)には、保険金 は支払われない。
被害者は、加害者に賠償支払能力がない場合でも、自賠責保険によって次の金額の範囲で賠償金が受取れる。
〇自賠責保険の支払限度額(被害者1人に付)
「死亡による損害」…葬儀費、逸失利益、慰謝料等、3、000万円まで。
「死亡に至るまでの傷害による損害」「傷害による損害」…治療費、休業損害、慰謝料等、120万円まで。
「後遺障害による損害」…逸失利益、慰謝料等、障害の程度に応じて75~4000万円まで。
〇被害者と加害者
負傷した人を「被害者」、その相手方を「加害者」といい、双方がケガをした場合は、自分のケガに関して「被害者」相手のケガに関しては自分が「加害者」となる。
〇保険金の「加害者請求」と「被害者の直接請求」
基本的には、加害者が被害者に損害賠償金を支払った後、保険金を損害保険会社に請求する(加害者請求)が、加害者側から賠償が円滑に受けられない場合、被害者は加害者の加入している損害保険会社に直接請求することができる。
〇損害額確定前に、被害者は治療費など当座の費用として、死亡の場合290万円、ケガの場合程度に応じて40万円、20万円、5万円の「仮渡金」を、また 治療が長引いている場合などで既に発生した損害額が10万円以上になると確認された時、被害者又は加害者は損害保険会社に請求できる(加害者請求は被害者 に支払った金額まで)。
〇自賠責保険をつけずに自動車および原動機付自転車を運転すると、1年以下の懲役または50万円以下の罰金、交通違反減点6点、免許停止の処分を受けることになる。
弁護士 佐藤 豊